#レポート

2・3年次生28名がラオスでの8泊10日のPBLグローバル・アントレプレナーシップ研修旅行を実施しました

8月25日から9月3日までの10日間、学校設定科目PBLグローバル・アントレプレナーシップの海外研修として、高校生28名がラオス・ルアンパバーンを訪れました。今回、生徒たちが取り組んだのは、調べて発表する探究ではありません。現地企業が抱えるリアルな課題を引き受け、自分たちで調査し、考え、商品やサービスを提案する本物の「仕事」です。

生徒たちは二つのチームに分かれ、Laos Buffalo DairyとGAEBIという現地企業と協働しました。現地でのヒアリングや観光客へのインタビューを重ねながら、観光、教育、新商品、日本市場への展開など、さまざまな可能性を検討しました。〔注1〕

しかし、アイデアを出すだけでは価値を生む仕事にはなりません。「なぜ、その商品なのか」「本当にその人がお金を払ってくれるのか」「インタビューで聞いた事実から、どの程度そうと言えるのか」大学生や起業家のメンター、実施団体Very50のコンサルタントから何度も問い返されます。生徒たちはそのたびに現地の人に話を聞き、仮説を修正し、仲間と議論し、提案をつくり直していきました。

研修後半には、自分たちで考えた商品のプロトタイプを製作しルアンパバーン市街で実際に販売会を行いました。8月は雨季で観光客も少なく、販売場所を歩く人もまばらです。最初は戸惑っていた生徒たちも、やがて自分から旅行者に声をかけ、英語で商品の魅力を伝え始めました。

ある生徒は、こう振り返っています。「自分が思っている以上に外国の方に声をかけたり、つたない英語で詰まりながら商品の宣伝をしたり、自分には積極性とか度胸とかないって思ってたから、頑張れる自分がいるんだって気づけた

誰かが本当に商品を手に取り、お金を払ってくれる。その経験は、教室で「よいアイデア」と評価される喜びとは全く異なります。振り向いてくれなかった経験も含めて、現実の世界から返ってくる反応そのものが、次への学びになりました。

9月1日には、それぞれの企業の経営者を前に、英語で最終プレゼンテーションを行いました。数日間の調査や販売経験をもとに、観光事業、新商品、教育、日本市場への展開などを提案し、発表後には経営者から具体的な質問が投げかけられました。

もちろん、数日間の調査で、その土地で事業を営んできた人たち以上にラオスの社会や市場を理解することはできません。しかし、このPBLで大切なのは「高校生が企業の問題を解決した」という成果だけではありません。学校では、ともすれば「先生が求めている正解は何か」「どうすればよい成績が取れるか」という方向へ学びが向かいがちです。しかし世界に出れば、あらかじめ正解を知っている先生はいません。自分の予想と違う事実に出会えば考え直し、仲間から異論を言われれば議論し、現地の人々の声を聞きながら、まだ存在していない答えを他者と一緒につくっていかなければなりません。

そして今回、生徒たちが向き合ったのは、企業の課題だけではありません。ある生徒は、出発前には「わざわざお金を払ってまで発展途上国に行くなんて」と感じていた自分が、現地の人々の暮らしや思いを知る中で、それまで世界の現実を自分から意図的に遠ざけていたことに気づいたと振り返りました。さらに、自分は成績や順位がつくことには努力できても、評価されないことにどこまで本気になれるのか、という自身の内面の課題にも初めて気づいたといいます。

教科書で「知っている」ことと、自分の目の前の現実として出会うことは同じではありません。また、海外へ行くことや課題を調べることだけでは、本校が大切にしている地球市民教育のためには十分ではありません。自分とは異なる世界に出会い、簡単には理解できないものの前で立ち止まり、「なぜだろう」と考える。そして、その世界の中で自分にもできる仕事を少しだけ引き受けてみる。本校PBLでは、そうした経験を大切にしています。〔注2〕

また、このような学びは、学校だけで実現できるものではありません。今回も多くの外部専門家や現地企業の皆さまに支えていただきました。〔注3〕

「正解を学ぶ」から、「世界の中で答えをつくる」へ。9月のオレンジ祭では、完成した提案や現地写真だけでなく、生徒が問いを立て、調べ、議論し、行き詰まり、考え直したプロセスを展示する予定です。ご期待ください。

〔注1〕協働した企業について

Laos Buffalo Dairyは、水牛乳を使った乳製品の製造・販売だけでなく、農家の所得向上、家畜の健康、地域雇用、子どもたちの栄養や教育など、地域課題の解決にも取り組む社会的企業です。GAEBIは、ルアンパバーンに伝わる手仕事や自然染色、100%オーガニックコットンを現代的なファッションにつなげているブランドです。

〔注2〕本校が大切にする教育

教育学者ガート・ビースタは、教育を知識や技能を身につけることだけでなく、子どもたちが「世界」と出会い、その世界の中で自分がどのように生き、応答するのかを学ぶ営みとして捉えています。本校のPBLでも、正解を教わることだけではなく、現実の世界や他者と出会い、その中で自分なりの応答を考えていく学びを大切にしています。

〔注3〕外部団体・現地企業との協働

今回の研修では、実施団体Very50から大学生・起業家メンターやコンサルタントが現地で生徒たちに伴走し、企業との調整、プロジェクト設計、日々のフィードバックなど、多大な支援をいただきました。日々の授業や担任業務を担う教師だけで、海外企業と連携した真正なPBLを継続的に実施することには限界があります。学校外の専門家や企業とそれぞれの役割を持ち寄って協働することで、生徒たちが本物の世界と出会える学びが可能になります。Very50、Laos Buffalo Dairy、GAEBIをはじめ、今回の研修を支えてくださった皆さまに、心より感謝申し上げます。